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『EVERYDAY NOTES』

『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2008 november

11月30日(日)
 午前中、NIDショップの見積もり比較をつめる。午後恵比寿、ナディフのカフェでNIDショップデザインの今後の展開をたっぷり打ち合わせ。今週で方針を固めたい。深夜、『シティ・オブ・ゴッド』(監督:フェルナンド・メイレレス、2002)のDVDを観る。ブラジルのスラム街での物語。最後に見たくなかった「based on a true story」を読んで脱力。数年前に『ホテル・ルワンダ』を観た時と同じように世界に対する自分の無知を恥じる。一体、われわれはこの現状に対して何ができるのだろうか?メイレレス監督作品は、『ブラインドネス』を先月、試写会で観たので興味を持っていたが、このデビュー作の衝撃には到底かなわない。彼は、大学で建築を勉強したとのこと。脚本ももちろんだけど、一つ一つの断片的な物語の構成に建築的要素が含まれていて、観入ってしまう。寝られなくなったので、読書。明日からもう師走。

11月29日(土)
 午前中、雑務。昼、渋谷駅で初めて岡本太郎の『明日の神話』を観る。そのスケールに圧巻。そして、雑多なあの渋谷駅の構内にすごくしっくりきている印象。あの迫力とエネルギーは、きっと人を魅了する。午後、ミヅマ・アート・ギャラリーにて池田学さんとインタビュー。作品については、もちろんのこと創作過程や日常生活などざっくばらんに会話をして、展示風景を撮影させてもらう。昨日書いた原稿も読んでもらい、共感を得てほっとする。夕方、早速池田さんとの話を踏まえて少し原稿に手を入れて、再度編集者に送信。夜は、シアターXにてアンサンブル・ゾネによるコンテンポラリーダンス作品『Still moving』を観る。音楽監督を務めた高瀬アキさんの新しい音楽世界とダンサー15人の音と踊りのコミュニケーションを堪能する。一緒に行った映画人の友人と恵比寿で食事。いつものように映画談議に花が咲く。深夜、思いついたように『時の墓碑銘』(小池民男、朝日新聞社、2006)を再読。

11月28日(金)
 午前中、メールなどの雑務とNIDショップの見積もりの比較検討。午後、ミヅマ・アート・ギャラリーへ行って雑誌、コンフォルトに池田学『予兆』新作展の紹介文を寄稿することを打診し、了解を得る。夕方、帰宅し早速800字ほどの文章を集中して書いて、コンフォルト担当編集者へ送信。夜は、ホームページの英訳作業、遅ればせながら英語サイドもベースが立ち上がる。深夜、ビル・エヴァンスのピアノを聴きながら、アガンベンを読み進めるもまだペースが掴めず苦戦。

11月27日(木)
 午前中、ジャック・ジョンソンを聴きながら大きなドローイングを描き続ける。午後は、セロニアス・モンクのピアノに音楽を変えてラストスパート。完成。二ヶ月前にスタートし、初めてこれだけ大きいドローイングを描き上げた。機が熟した時にちゃんと発表できると信じて、手を動かし続けよう。思えば去年の今頃、ベルリンで『connected borders』を展示していたんだな、一年って早いね。続けて尾山台村増築計画の図面化作業。夕方、白井工房にて銅版画。年賀状と小作を刷る。納得のいく仕上がりに満足する。工房でのこの時間を大切にしたい。夜、六本木にて金融業界で働く友人と飲む。異業種の友人から学ぶことが多く、いつも刺激を受ける。話も大いに盛り上がり、雨の中自転車で帰宅、寒い。

11月26日(水)
 午前中、雑務。昼から中目黒にあるミヅマ・アート・ギャラリーに行って池田学の新作『予兆(2008)』を観る。圧巻。そのスケールとディテールに1時間以上作品を観入ってしまう。波をテーマに、雪や氷、水、骨、船、自然、動物、人間などが渦を巻いている。ご本人とも夏の友人のバーベキューでお会いして以来の再会。作品について話を聞く。丹念に描かれたその世界には観る者を強く引きつける答えのないストーリーがあり、大いに感動する。帰宅し、僕も触発されてすぐに銅版に向かう。針でもって銅版に彫っていく作業は、ペンと紙とはまた質の違った時間であり、三時間弱集中して一気に年賀状を彫った。さぁ、新年を迎えた時に皆が喜んでくれるだろうか。五年ぶりの年賀状(多くの友人、知人の現住所を知らないので調べねば)になる。夜、友人と旧小笠原伯爵低でスペイン料理を食す。学生時代からの友人で僕の開業を祝ってもらい、パエリアとイベリア豚が特に美味。深夜、大きなドローイングに向かってペンを進める。完成間近。

11月25日(火)
 秋晴れ?冬晴れ?とにかく気持ちいい天気なので掃除と洗濯で一日をスタート。午前中、尾山台増築計画の模型に手を入れる。午後、立面をエスキス、スケッチする。夕方、大きなドローイングを少し進める。あと少しで完成だからこそ、ディテールに納得のいく状態まで描く。夜は、読書をするもすぐに寝てしまう。

11月24日(月)
 午前中、雲が低いところをスピーディーに動いていたら、やはり雨が降り出した。ホームページ英語版の作業を進める。尾山台村増築計画の図面化を整理。午後、東京コンテンポラリーアートフェアに行く。これが今の東京のアートの一つの水準か。招待してくれた友人には会えず。続けてテキスタイルをやっている友人のオープンアトリエに顔を出すも、こちらも残念ながら友人と入れ違い。『友達』(安部公房、新潮文庫、1987)を一気に読む。一昨日観た芝居がいかに原作に忠実に演出されたかを知る。やはり僕が感じた現代性は、岡田利規の解釈で描く役者のキャラクター性の徹底と阿部公房の描く物語が社会の問題性を深く切り抜いて描いているため、うつの時代といわれる今も共通するからだ。夜も雨はやまず、空は不思議な色だった。

11月23日(日)
 早朝から自転車で兄の家へ。棚の製作の続き、午前中に大工作業終了。昼から原宿にある日本陶芸倶楽部へ。展示会をゆっくり案内されながら観る。総じて女性の作品がエネルギッシュで、印象に残る作品は女性ばかり。大いに刺激を受けてその後、電動ろくろを使った体験コーナーに。高校生のとき以来の土の感触を楽しむ。土はしごくエロティックで、生き物のようだ。指の微妙な力で大きく形が変形する。楽しくご飯茶碗を製作。更には、茶会を初体験。すごく勉強になる濃密な時間をすごし、すぐにまた兄の家に。七時間かけて二つの棚に塗装作業。丁寧にやっていたらえらく時間がかかってしまったが、納得の出来。夜、無事完成して指定された位置に設置。ばっちり。手がペンキだらけのまま、恵比寿で沖縄料理を食す。

11月22日(土)
 午前中、部屋の掃除と雑務。昼からクライアントとNIDのショップの今後の方針についての打ち合わせ。午後は、三軒茶屋に行って『友達』(作:安部公房、演出:岡田利規)を観る。超満員。阿部公房の作品のもつ現代性と強度が見事に一人一人の役者によって不思議なバランスを保ちながら観客との対話のごとく岡田利規はその世界観を演出した。シンプルなステージにテンポ良く物語が展開する。チェルフィッチュの時とは全く違うものが観られ、芝居として背景には共通する水準が感じられたので氏の自由さに共感する。よいものを観た。夜は、好きなステイシー・ケントのフランス語なまりの英語を聴きながら、大きなドローイングに手を入れる。この作品もそろそろ完成するだろう、楽しみだ。

11月21日(金)
 午前中、切り出された木材を乗せたトラックに同乗して兄の家に。集中して棚の製作。一日大工。具体的に手を動かすのは楽しい。精度を出しながらの製作で、結局塗装までいかないでタイムアウト。終わらなかったので、また週末に作業を予定。夕方、NIDのショップ現場にて業者さんと打ち合わせ。これからの作業と起動修正案を整理する。夜は友人宅にて鍋。美味。

11月20日(木)
 雲ひとつない連日の快晴。しかし、自転車で風を切るように走ると秋というより既に冬、寒い。午前中、NIDのショップ現場にて細かい再実測。DUNEオフィスにて打ち合わせ作業。夕方、業者さんと打ち合わせ。夜、オーチャード・ホールにてロッシーニのオペラ『オテッロ』を鑑賞。三時間半の大作。学生時代に聴いたキース・ジャレット以来のオーチャード。ベルリンのフィルハーモニーと比較してしまうが、空間のボリュームとプロポーションが全く違い、通いなれたフィルハーモニーが懐かしくなった。『オテッロ』の舞台装置は、九つのドアが動き、そのドアにもパースの効いた背景の三面の壁にも水平線が描かれていた。それは空と波がトーンの違うブルーで表現されたシンプルな連続水平線。しかし、オテッロとロドリーゴの二人の男が一人の女、デスデーモナを巡って展開する物語は、背景の連続する水平線とは裏腹に、血をみる悲劇に終わる。あの水平線の先には楽園はなかったのだろう。音楽も舞台も演出もすごく高い水準であるが故に強烈に印象的なシーンがなかったように感じた。明日、兄のために木製の棚を施工するため、深夜はその寸法と順序の最終確認と今日の打ち合わせのフィードバック作業。

11月19日(水)
 ピクニックにでも行きたくなるような快晴。午前中、品川区役所へ。午後、NIDのショップ現場にて実測。それからDUNEオフィスにて模型とデザインミーティング。さすがに10分の1の模型は、リアルな空間が立ち上がり、興奮する。大枠を決めて、細かいデザインを進めたいところ。夜、目黒にて友人と合流して食事。楽しい集まりで、大いに盛り上がる。自分と似た匂いをもつ人間とはすぐに反応する。これから一緒に何か展開できるといいね。深夜、NIDのエントランスの図面化。明日の打ち合わせで第一ステージを突破できるかが決まってくるので、頑張らねば。また、アガンベンを読みながら寝る。疲れてるのか、読書はスローペース、すぐに寝てしまう。こういう時は、気分転換に村上春樹でも読み返そうかな。

11月18日(火)
 午前中、品川まで行って青色申告についての講習に参加。昼、ロンドンで働く友人の友人に会ってランチ。ドイツ人と韓国人の建築家カップル。自己紹介を含めていろいろ話し込む。一緒に何かできると良いのだが。午後、DUNEにてNIDのショップデザインを集中的に進める。スケールアップした模型でつくりながらの検討。作業はスムーズに進んでいるが、ここから細かいところを詰めていけるかが今後の鍵だな。深夜、アガンベンを読みながら寝る。最近、よく動いているので読書が止まってるな。

11月17日(月)
 午前中、自転車で半時間かけて世田谷区役所に行く。設計は前川國男。コンクリートの表情に歴史を感じるし、建築の区役所としての使われ方などについて考える。建築調整課で相談と書類集め。昼から棚の設計と見積もり。昨日のライブでセロニアス・モンク自身のピアノが聴きたくなったので、聴きながら作業を進める。メールなどの雑務をこなし、夜は尾山台村増築計画の立面のエスキス。深夜、思い立ったようにアガンベンを読んでから寝る。

11月16日(日)
 午前中、雑務。昼から東大に行って、3年生の設計製図の公開講評会をみる。早稲田と東大のジョイントの試みで、先生方のクリティックを久しぶりに聞いて学生時代を思い出す。総じて、両校の学生の設計水準は高く、何よりこうして他大の先生方の批評が聞かれるのは学生にとって最高の贅沢。僕の時代と違って、3年生で共同設計をしているのが学生特有の幼稚な「我」(これも大事)がなく、どこか器用にまとめた感は否めない。他者を受け入れているからこそ社会性のようなものは課題に出てくるのだが、個々のアイデンティティーに関しては薄れているのかもしれない。しかし、そんなことよりも両校の先生方の個性あふれるクリティックが時にはバトルになり、興味深かった。果たしてどこまでそれを学生たちが汲み取っているのだろうか。夕方、新宿で調べもの。夜、ピットインにて高瀬アキ×大澤香織のジャズライブを聴く。セロニアス・モンクのナンバーを二人が一台のピアノでエネルギッシュに演奏。至福のとき。その後打ち上げに混ぜていただき、楽しいひと時を過ごす。またの再会を楽しみに明日から頑張ろう。

11月15日(土)
 午前中、デスク整理。午後、業者さんとNIDの現場にてショップの打ち合わせ。職人さんとの話は早い。夕方、帰宅して仕事。夜は高校時代の友人と急に会うことになり、沖縄料理を食す。外科医になった彼と互いの近況を話し、医療や病気のことから建築まで盛り上がる。「二、三十代でガンに発症してしまうと進行が早く、亡くなる可能性が圧倒的に高い」という言葉に衝撃を受ける。われわれよりよほど「死」をリアルに見ているからこそ説得力がある。健康診断や人間ドックで自分の体を知る努力もさることながら、結局日常の生活習慣をしっかりと管理して、ストレスのない状態で幸福をみつけて生きられるように自覚するしかないことを思い知らされる。11月ももう折り返し。

11月14日(金)
 午前中、尾山台村増築計画の立面のエスキス。昼からNIDのショップの現場に行き、続けてDUNEのオフィスで業者さんとの打ち合わせ。このプロジェクトがいよいよ動き出す。夕方、時間調整も含めて両国のカフェでスケッチ。夜、シアターXにて『飛魂(Ⅱ)』(多和田葉子×高瀬アキ)を観る。二人の女性クリエイターによる文学と音楽との知的なコミュニケーションへの試み。思えば昨年、友人を介してアキさんの自宅で『飛魂(Ⅰ)』のリハーサルをやるとのことで知り合ったのがきっかけだったので、こうして舞台で観たのは初めてだったが一年前の映像が明確に蘇る。二人の世界観が心地よく共鳴する感じがとても好きなのは、異分野であるということよりも、むしろピアノ演奏と言葉のリーディングという違いを超えて、境界線をなくした二人が共通の地平線に立っているからなのだと思った。舞台後お二人に挨拶し、帰国してからの近況を話す。髭と眼鏡もあって、多和田さんに「あら、ベルリンにいた時は日本人っぽくて、日本に帰ってきたらドイツ人っぽくなったね」と言われる。夜は恵比寿で星の展示最終日に顔を出して、ウィスキーを飲む。

11月13日(木)
 午前中、恵比寿、青山のショップを自転車で駆け足に視察。昼、DUNEのオフィスでNIDのデザインセッション。インテンシブにショップのアイディアをぶつけ合って、大枠を決めていく。夕方、白井工房にて銅版画。今日は、エッチングのアクアチント工法を進める。工房での四時間があっという間に過ぎる。こうやってカリカリ手を動かすのが好きなのだ。次回には、初めてのエッチングが完成するだろう。楽しみだ。帰宅して、スタン・ゲッツを聴きながらNIDのエントランスをひたすらスケッチする。

11月12日(水)
 午前中、アイディアをスケッチして頭を整理する。昼、早速原宿のNIDショップの現場を見てスタッフと打ち合わせ。午後、大学時代の先輩建築家に会いに埼玉へ。竣工した自邸を見せてもらい、事務所の運営についてのアドバイスを受ける。夜、恵比寿でベルリン時代の友人たちと合流し、楽しく話し込む。深夜、現場で浮かんだアイディアをスケッチする。頭の中を自由にしたい。安部公房を読み返しながら寝る。

11月11日(火)
 午前中、昨日の図面を整理して見積もり依頼を送信。午後は読書し、尾山台村計画の立面をスケッチ。夕方、銀座で友人が出展している漆の展示会に顔を出す。友人とお茶をし、夜は神楽坂にあるファッションデザイン会社DUNEのオフィスへ。同世代として刺激を受ける会社であり、ベルリンの友人が働いているのを機に知り合い、原宿のショップNIDの店舗デザインを一緒に手がけることに。まだまだこれからだけど、可能性を感じる魅力的な仕事なので頑張りたい。ファッションと建築は「スピード」が全く違うのでしっかりとペースをつくってクリエイティブな空間をつくりたい。早速、明日現場を見る約束をする。深夜、頭によぎるアイディアを整理してスケッチする。

11月10日(月)
 午前中、図面作業。昼飯時にDVDでNHKの『芸術劇場-岡田利規、チェルフィッチュ』を見る。昨日渋谷で本谷有希子の芝居を観てから二人の共通点が気になっていたのでこの番組を見る。彼も僕は、小説の『三月の5日間』(岡田利規、新潮社、2007)が好きで興味を持った。肩肘張らない、どこかつかみ所のない、反復される文章が静かに感情を浮き上がらせながら何か漠然とした「今日の時代性」を強烈に描き出している様で驚いた。残念ながら小説のみで舞台が観られていないのだが、同じチェルフィッチュの芝居『フリータイム(2008)』を六本木で観た。固定観念や殻を破って、何か新しいことに挑戦する姿勢に自由さを感じ共感する。午後も、夜も、深夜も終始図面作業。息抜きにNHKの『プロフェッショナル、仕事の流儀』を見た。水産加工船という300トンもの魚から一気にタラコ、すり身、かまぼこ等をつくる大工場のような船があることを知る。その船のリーダー、吉田憲一さんの目は怖いくらい鋭かったのが忘れられない。

11月9日(日)
 午前中、読書。少し体がだるい、風邪を引きそうだ。昼過ぎ、友人と合流し『幸せ最高ありがとうマジで!』(作・演出=本谷有希子、主演=永作博美)の千秋楽を観る。『生きてるだけで、愛。』(本谷有希子、新潮社、2006)を読んで以来ずっと気になっていた劇作家。彼女の舞台には何か現代の若者が抱える不安や絶望、そして幸福や喜びまでがシャープな切り口でパワフルに存在する。安直なテーマ性というよりは、多様な価値観が各々のキャラクターを通して提示され、テンポよく物語は展開する。また、彼女の描く魅力的な「イタイ女」は、きっとある意味彼女の分身なのかもしれない。舞台終了後、友人が本谷有希子と同級生ということもあって、本人に挨拶する。夕方、一緒に観に行った友人たちと食事しながら演劇談議に盛り上がる。良いものを観たので、帰宅し自分もドローイングを描く。風邪を引きそうなので、早めに寝る。

11月8日(土)
 午前中、図面作業を進める。昼から兄が甥と姪を連れて遊びに来る。子供と遊んでいると不思議な発見があって楽しい。学習能力の高さに驚かされる。夜は、スウェーデンからザウアブルッフ・ハットンの元同僚が遊びに来る。外国人の友人を案内するといつも新しい発見があって面白い。なぜ日本人はマスクをつけているのか、みんな英語が話せないのはなぜか、上野・新宿・銀座・渋谷と同じ東京でも駅によって集客する人々の年齢層が全然違うのはなぜか、など話は尽きない。建築談議にも花を咲かせる。今度会うのはきっとストックホルムかな。深夜、帰宅するのに自転車で帰っていたら指がすごく寒くなってきた、いよいよ冬だね。


11月7日(金)
 もう完徹はできなくなっていた。午前中、寝る。午後、図面化作業。夕方、『限界集落』(梶井照陰、フォイル、2008)を読み終える。限界集落とは、65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超え、集落の共同活動の機能が低下している集落のことを言い、あとがきによると今後10年で423の集落が消滅する可能性があるらしい。著者は、僧侶であり写真家でもある。氏の文章が集落で取材したお年寄りの方々の目線で語られた現実であり、国の70%近くが森林である日本の「豊かさ」に対してこの現況を「貧しさ」と捕らえているところに危機感を覚えるも、都市生活者のわれわれは一体何が出来るのだろうかと考える。決して一筋縄ではいかない問題であり、高度資本主義の利益追求型社会のひずみが社会のマイノリティーにのしかかっているのが読み取れる。夜、ベルリン時代の友人と飲む。今日、ジャーナリストの筑紫哲也さんが亡くなられた。物心ついたころから氏の鋭い批評眼を一つの指針として頼りにしていたので、とても残念である。学生時代に講演会でお目にかかったことがあったけど、気取ったところのないかっこいい印象だった。ご冥福を祈ります。

11月6日(木)
 午前中、ホームページ作業。午後、友人デザイナー宅にてホームページ作業を続ける。夕方、北山創造研究所にてエナジーリンク。北海道の十勝にて「千年の森」プロジェクトを展開している林克彦さんのお話。森をつくることから始まって、観光、レストラン、アートと総合的に森をより豊かな場所にして、地域を活性化する試みに共感した。日本中にこんな「千年の森」がどんどんできるときっと日本は変わるだろうな。夜、終始ホームページ作業。深夜、まずは一段落というところまでくる。このサイトが僕の「情報発信基地」となるように、毎日頑張っていこう。結局、三時頃ベットに入るも寝れなくて、再度、起きてホームページ作業を進めたら朝になっていた。久しぶりの徹夜だ。

11月5日(水)
 午前中、尾山台村計画のプレゼンテーションの仕上げをし、午後はクライアントの方とデザインミーティング。毎度の対話とフォードバックでいよいよ案とプログラムが固まりつつある。途中、米国大統領選、オバマ圧勝を知る。これには、アメリカという国の「change」に対する可能性を感じて、嬉しい。夜、ニュージャージより一時帰国した両親と弟と焼き鳥を食す。仕事帰りの兄と合流し、兄家族宅におじゃまして、甥と姪と遊ぶ。久しぶりの家族全員集合だった。

11月4日(火)
 午前中、デザインした名刺を印刷しに行く。いよいよ事務所の「顔」が出来た。『建築家は住宅で何を考えているのか』(東京大学建築デザイン研究室(編)、PHP新書、2008)を読み終える。日本人建築家の住宅における挑戦がテーマ別に解説されていて、頭の中でいろいろ整理ができた。午後、代官山で開催中のインスタレーション『ひとへやの森(設計:成瀬・猪熊建築設計事務所)』を観て、設計者の二人と話をする。同世代の建築家として刺激を受けた。夕方はエスキース・スケッチを進めて、明日のプレゼンテーションの準備をつめる。夜、図面作業に切り替える。明日、オバマがやってくれるだろうか。

11月3日(月)
 午前中、外の曇り空とは裏腹に、軽快なステイシー・ケントの歌を聞きながらドローイングを描く。午後、図面作業を進める。夕方、自転車で六本木の森アートミュージアム、アネット・メサジェ『聖と俗の使者たち』展覧会に行く。最終日だった。鑑賞者に若い女性が多いのも、やはりメサジェのグロテスクであり、かわいらしいところに共感するのだろうか。彼女の展示は、女性ならではの感覚で感じた世界が表現されていて、糸や棒などの線材とぬいぐるみなどのマスを巧みに組み合わせた不思議なおもちゃ箱にでも迷い込んだ印象。立体、絵画、写真と自由にメディアを開放していくのが多様な表情を生み出していた。良い展示を観たからか、夜は三時間ばかり集中してドローイングを描く。手がよく動いて頭がさえてきたので、深夜はエスキース・スケッチを展開する。

11月2日(日)
 午前中、図面作業。午後は埼玉までクライアント候補の方に会いに行く。二時間ばかり話をし、これから仕事になるか連絡を待つことに。楽しみだ。往復の電車で『ウェブ進化論』(梅田望夫、ちくま新書、2006)を読み終える。グーグルという会社の可能性を軸に現代のウェブ社会の構造を知る良著。ロングテールという視点は頭に入れておく必要がありそうだ。夜、渋谷で映画『闇の子供たち』(監督:阪本順治、原作:梁 石日、2008)を観る。臓器移植に伴う人身売買をテーマにし、賛否両論を引き起こす強烈な作品。グローバル化した現代化社会において、複雑に絡み合う各々の善と悪がゆがんだ社会を映し出し絶望する。そんな絶望に対する新聞記者の南部(江口洋介)やNGOスタッフの音羽(宮崎あおい)、タイの現地ボランティアのそれぞれの対応が観る者にメッセージを送り、そこから希望を見出せるかをゆだねられたように思う。

11月1日(土)
 午前中、図面作業。午後は読書。『ネオンと絵具箱』(大竹伸朗、月曜社、2006)を読み終える。今年の夏の森山大道展の際に企画された森山大道×大竹伸朗の対談にいった時に感じた両氏の過剰性について考えた。本書の文章には、大竹伸朗という芸術家の豊かな感受性が読み取れて、的確で絶妙な表現が氏の壮大な世界観の原点を少し見せてくれたようで興味深かった。夜、ベルリンから来ている友人の画家、星智の個展『Flowers』オープニングのため恵比寿へ。友人の新作を観てエネルギーをもらい、懐かしい再会もあり楽しい集まりであった。

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