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『EVERYDAY NOTES』

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『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2009 april

4月30日(木)
 洗濯日和。午前中、部屋を掃除して気持ちの良い机でコンペ作業。昨日はじめた新しいドローイングも進める。午後も終始コンペと読書。

 『近所の景色・無能の人』(つげ義春、筑摩書房、2009)を読み終わる。漫画を読んだのはかなり久しぶり。つげワールドは、いつ読んでも新鮮で時間に耐える強度のある作品がたくさんあって面白かった。社会が画一化し、効率性にばかり目が行く現代においてつげ義春の描く日常から学び得ることは多いのではないだろうか。ユーモアのある純度の高い物語から自己の価値体系をしっかりと築き上げないといけないことを考えさせられた。これは全9巻読みたくなった。

 夕方、白井版画工房へ。早速昨日完成した小作を試し刷り。これで六作品目。まだアクアチント作業ができなかったので絶対的な空白をつくった感じは確認できなかったけど満足のいく仕上がり。

 今日も3通の「プロジェクト30」が届く。小学校の恩師から綺麗な字で手紙も同封されていた。沢山の色を重ねて塗られた「しおり」を見ながら僕が小学校を卒業し、カナダへ行くときに『天空の城ラピュタ』のビデオと色鉛筆をもらったのを思い出す。同じく小学校時代とトロント時代の幼馴染二人からも力強い「しおり」が届く。4月にして26枚も返信されるとは嬉しい限り。深夜、ローマにいる友人から「しおり」が届いたとの連絡。ドイツやイギリスからはもう返信があることを思うと、イタリアの郵便事情に驚く。

4月29日(水)
 午前中、NIDショップの写真撮影。竣工して3ヶ月が経ち、色々な使われ方をしているのでその感じを含めて写真に収めようと努力する。昼前、撮影終了。午後、早速このサイトの『WORKS』『NEWS』に公開するための作業を進めて、無事NIDショップの写真を沢山アップする。今までずっと模型写真だったので一安心。これは一つの始まりであり、これからもどんどんやっていきたい。

 銅版画の仕上げ。無事、新しいアイディアをモノにした感覚。これを明日、工房で試し刷りするのが楽しみだ。このタイミングで銅版画から建築が消えてランドスケープの山々が出現したことについてあれこれ考える。意図的に絶対的な空白もつくったので、どのように刷り上がるかが楽しみだ。思いついたことを頭の中に留めないで、カタチにすることの難しさと楽しさを共に味わいながらの作業であった。どんどん挑戦して進めて展開したい。

 夜、トロント時代の友人と渋谷で会う。30歳の誕生日を祝って乾杯。バーの店長もストレートな人で、「プロジェクト30」のお礼から近況報告、あっという間に時間が過ぎる。一緒にバスケットボールを追いかけた中学時代から18年来のこうした友人からいつも沢山の刺激をもらう。世の中は、今日からゴールデンウィークらしい。

 深夜、誕生日にマンハッタンを散歩していて思いついたアイディアを実行してみる。新しいドローイングの始まり。気分も良く、すいすいとペンが走る。これもきっとカタチにできると信じて手を動かせ続けたい。もうすぐ4月も終わる。時間の早さに愕然とする毎日。桜を楽しんだのはいつだったか。

4月28日(火)
 午前中、『愛するということ』(エーリッヒ・フロム、紀伊国屋書店、1991)を読み終わる。「愛は技術だろうか。技術だとしたら、知識と努力が必要だ。」という文章から始まるこの本は、実に多くのことを教えてくれる。人間的に成熟してなければ本当の意味で人を愛することはできないということを人間の孤独や不安から説いていくフロムの理論に深く共感する。最後にフロムは、愛するための条件を「規律、集中、忍耐、最高の関心」に求めてそれを「目標への段階は自分の足で登っていかねばならない」と言ってナルシシズムを克服して客観的であることの大切さを我々に伝えている。「赤の他人を愛することができなければ、身内を愛することはできない」と言っているのも説得力がある。自分の家族のことや今まで出逢ってきた友人、最近では昨日のバーの方々や先週ふとしたことで知り合ったMさんやNさんもみな謙虚で愛のある人生の先輩たちばかりである。自分もそうありたいと強く信じて、日々精進したいと思う。「プロジェクト30」も現時点での自分のそんな気持ちの一つの表現である。今日もポストにはトロント時代からの友人の「しおり」が届く。彼は、僕の線から大きくはみ出して力強い赤色を塗ってくれていた。こうして集まってきた二枚目のドローイングに見えるモザイク上のエネルギーこそ僕に深い勇気を与えてくれる。

 午後、ずっとコンペの作業。窓からは澄んだ東京の青空が見える。インタビュー集のこともあれこれスケッチする。夜、ナスと豚肉を炒めて食す。コンペのアイディアを展開する。深夜、読書して寝る。

4月27日(月)
 今日も本を片手に芝生の上でピクニックでもしたくなるような素晴らしい陽気。ジャック・ジョンソンを聞きながら軽く部屋の掃除。午前中、コンペの作業を続ける。

 午後、ベルト・ノイマン(舞台美術家)やトーマス・デマンド(写真家)、多和田葉子(作家)とのインタビューについて考える。ベルリンを離れるにあたって2007年に自分で企画したこのインタビュー・プロジェクトをずっと眠らせてしまっている。どうにかしたい。

 夕方、コンペのスケッチと昨日の銅版に向かう。いつも描いている夜の風景から建築が消えた。もうすぐ仕上がるだろう。どうなるか楽しみだ。NIDショップの記事がファッション・サイト「ACROSS」に紹介されたとの連絡。ぜひ近くに行った際は覗いてみてください。ハイ・ファッションな洋服と出逢えるはずです。

 夜、来月ベルリンに帰る友人と銀座へ。兼ねてから行こうと言っていたバーで素敵な人たちと楽しく飲む。初対面とは思えない盛り上がりでテンションも上がりっぱなし。

 深夜、寝られなくてDVDで『ぐるりのこと』(監督:橋口亮輔、2008)を観る。何気ない日々の生活を繊細に描写していて、裁判画家としていろいろな人間模様を目の当たりにしながら、自分の人生についてのごく普通の幸せを求める姿が描かれていた。問題のない人間はどこにもいない。それをどのように受け止めて一歩一歩生活していくのかという幸福論を考えさせる映画であった。 

 「プロジェクト30」の連続返信記録は今日も続く。3通。ロンドンの同級生からは迫力のあるオレンジ色で仕上げられて届く。SONY WORLD PHOTOGRAPHY AWARDのAcademyメンバーであり、キュレーターの太田菜穂子さんと版画工房の白井先生からも、共に独特の配色でセンスの良い「しおり」が届き、しばし見入ってしまう。

4月26日(日)
 午前中、画家アングルのNHK『日曜美術館』を観る。写実的な裸婦についての視点の変化によりキュビズム的な読み込みができることを初めて知る。昔、ルーブル美術館で『グランド・オベリスク』を観たときに異様に背中が長いと感じたのを思い出す。先日恵比寿で写真展を観た篠山紀信が出演していて、幾度と「写真的な画家」であると言っていたのが印象的。

 午後から新しい銅版を始める。良いものを見るとすぐに手が動き出す。昨日の雨が嘘のように鋭い日差しと強い風が吹く。朝にはあった道路の水溜りもあっという間に姿を消す。

 夜は、陶芸家ルーシー・リーのNHK『日曜美術館』を観る。彼女の小さな体を乗り出して釜から作品を取り出す姿も印象的だったが、何より彼女の手の写真が如実に彼女の宇宙を見事に表現しているようで感動した。近く六本木に行って器を実際に観に行こう。しかし、三宅一生に送られた遺言としてのボタンがまた実に美しかった。

 深夜、また針で線を彫り進める。

4月25日(土)
 朝からの雨。ニラともやしを炒めて、オイスターソースで仕上げて食す。

 昼前、『バーン・アフター・リーディング』(監督:ジョエル&イーサン・コーエン、2009)を観に出かける。全く接点のないと思われる五人のストーリーが偶然少しずつ繋がっていくことで結局何も生まれない現代社会の病らしきを実にうまく描いていて面白かった。『ノーカントリー』もそうだけど、現代の不条理な世界を描くコーエン兄弟からは色々と考えさせられる。まさに昨日の石山さんの言うライフスタイルをしっかりデザインしないとああなってしまうのだろうか。しかし、人の人生は決して「読んでから燃やしてしまえる」ものではないので、それを強烈なキャラクターとユーモアでうまく伝えているのではないか。映画の始まりと終わりがグーグル・アース的な映像で始まるのは、確信犯で、あれはつまり世界中のどこにクリックしてズームインしても同じということではなかろうか。期待を裏切らない良い映画であった。劇場を出る若い女性たちがみんな素敵な長靴をはいているのを見て、雨の日も楽しいかもと勝手に想像する。

 午後は、事務所で一日中コンペ作業と読書。雨の日の静かな時間。

 今日も、ポストには3枚の「プロジェクト30」返信封筒、内2枚はドイツから。ベルリン在住の作家、多和田葉子さんからも優しい色鉛筆の線が印象的な「しおり」が届く。建築家の友人からは故郷オルデンブルグの画家のポストカードが額装されて同封されていた。この調子だと意外ともしかして、本当に130枚のしおりすべてが戻ってくるかもしれないと思えてきた。

4月24日(金)
 午前中、メールなどの雑務。午後、コンペの作業を進める。今日もポストには、2通の「プロジェクト30」返信封筒が。高校の英語の先生からの手紙に、「クラスルームで今の生徒に向かって光嶋くんからの手紙を読み上げました」とある。今の15歳のみんなにはこのプロジェクトがどのように映ったのだろうか。小さなことだが、こうして起こした一つの行動が予期せぬ点となり、線となっていくことに喜んでいる。何より、15枚の新しい「しおり」たちがつくるもう一枚のドローイングの魅力がそれを物語っているのが嬉しい。ほとんどの人が僕の着色とは全く違って自由にやっているということと木々の緑の部分がピンク色の桜になっている人が多いことに気づく。

 夕方、代々木にあるGAギャラリーにて『石山修武ギャラリートーク』に行く。展示された住宅作品の数々から石山修武研究室の模型だけ異色であった。ギャラリートークの前にスタッフの渡邉とお茶。「しおり」のお礼と今進んでいるプロジェクトの話で盛り上がる。七時、石山さんは良質のデザインは、自己のライフスタイルのデザインからしか生まれないと述べ「二川幸夫の眼、磯崎新の頭、山本夏彦の文」という自身のライフスタイル形成に影響を受けた人の話をしていた。ネパールでの修復建築を自分の最期の建築としたいという話は初めて聞いたので印象的だった。アドリブで話をする石山さんを見て、大学時代の講義と共に昨年の世田谷美術館での連続レクチャーを思い出す。

 夜、再度コンペの仕事。深夜、近所をジョギング。体が重い、もっと絞らねば。パラパラと雑読して寝る。

4月23日(木)
 午前中、尾山台増築計画の今後の展開をあれこれスケッチする。いろいろと紙に線を描いていく。明日のレクチャーのために『アニミズム周辺紀行2』(石山修武、絶版書房、2009)を読む。僕も学生時代に二度ほど「ひろしまハウス」レンガ積みツアーに関わってカンボジアに行っていて、もう七年近く経つが文章を読んでいて、そこにナーリさんがいるかのように鮮明にイメージが記憶のすみから蘇ってきた。とにかくあの破天荒なライフスタイルをまっすぐに生き続けるナーリさんが全く新しい自由さでもって立ち上がる。不思議な感覚での読書であった。

 午後、石山さんの文章に刺激されたのか、急に思い立ってスケッチブックを持って家を出る。初めて水彩セットを持参。すると家を出て五分、自転車で坂を上りきったら目黒の駅前に早速不思議な空地が立ち現れていてすぐにペンを握った。着色もあるのでいつもより二倍時間がかかったが、40分ほどでスピードスケッチが完成する。スケッチをすることで旅の感覚らしきを日常に持ってくることができることを再確認。そのテンションでギャラリー間のクライン・ダイサム展へ。来日20年を記念した展覧会。実にポップで、多彩な表現の建築が連続する。展示もクリスタルに空間を閉じ込める面白いものだった。

 乃木坂まで来たので、スペインドローイングのクライアント夫妻に紹介してもらった喫茶店、大坊珈琲店に初めて行く。その暗い店内に一歩足を踏み入れると、そこには不思議な時間が流れていた。今は見なくなったピンクの公衆電話があり、マスターが丹念に珈琲をドリップしている。空間もさることながら、そこにいたお客さんの人間模様が実に非日常だった。参考書を開いて勉強する青年に、辞書を読み続ける少女、近くのショップの店員らしき女性二人。みんながゆるやかに流れるBGMのジャズピアノに身をゆだねて、美味しい珈琲を飲んでいる。しばらくして、パイプを吸うNさんと知り合う。ふとしたことで隣に座ったNさんと話が弾み、大学の大先輩の友人ということで更に盛り上がる。パイプの話からヨガの話、ヨットの話にあまりに楽しくなって、二杯目の珈琲を注文した。先日のMさんに続き、また不思議な幸福の出逢いであった。「偶然ってのはないんですよ」とNさんは言う。二時間近くいた、東京のど真ん中にある異次元な喫茶店には、それこそ村上春樹の小説の世界とでもいう空気感が漂っていた。ある種の興奮状態で重い扉を開けて店を出ると、そこには真っ白な白い壁があり、階段を下りると急ぎ足で街を行くOLさんたちが僕を現実世界に戻してくれる。

 続けて、NIDショップに行って、オープン三ヶ月の状態をチェック。DUNE社長と会って近況を話し合う。実に多くの示唆に富んだ話をし、お互いのこれからの健闘をたたえる。毎回自由にラックの位置が変えられていてショップとしてうまく機能していることに喜びを覚える。

 すると、渋谷に高校時代の友人がいることをかかってきた電話で知り、心地よいバーでウィスキーを頂く。たまたま郵送しようと思っていた「プロジェクト30」の「しおり」を彼から手渡しでもらう。久しぶりということもあってこれまたマシンガントーク。なんだかすごい長い、充実した一日であった。こうしたことがあるから日常ってのは、面白い。

4月22日(水)
 不思議な夢を見た。ベルリンを舞台に現実ではありえないような人間のドラマが展開された。お互いに接点のない色んな時代の友人が登場人物として入り混じっていた。ベルリンの都市風景は的確で自分の夢なのに懐かしくなった。この夢が更に面白かったのは、自分の目線で見ていた映像が時に第三者の視点にワープして自分をも映像に取り込んでいたこと。物語の語り部のごとく。窓から差し込む強い日差しがゆっくりと夢を洗い流す。

 午前中、コンペのスケッチ。アイディアを整理していく。午後も作業。夕方、本屋で珍しく漫画の方まで行ったら『近所の景色・無能の人』(つげ義春、筑摩書房、2009)が目に入ってしまい即購入。つげさんの世界観は学生時代に『ねじ式』を読んで以来強く引き込まれている。この文庫版シリーズも全9巻だし、じっくり楽しみながら読み進めたい。

 今日も「プロジェクト30」の「しおり」が届く。結婚した高校時代の親友が一生懸命塗ってくれていた。ペンのインクがなくなったのか、上の方が色がフェードアウトしている感じ良いグラデーションをつくっていた。

4月21日(火)
 午前中、デスクワーク。昼前、思い立ってナディフに行って篠山紀信の写真展へ行く。しかし12時からオープンということで、しばし外で待っていたら千葉から来たという白髪の髭が生えた71歳のヨット乗りのМさんと知り合う。初対面とは思えない会話のキャッチボールがどんどんシンクロし、一緒に展示ギャラリーも回り、カフェでコーヒーを飲む。船や旅の話を中心に、絵を描く話など大いに盛り上がる。思いがけぬ喜ばしい出逢いだった。

 初めて観た篠山紀信の写真には全くエロスを感じなかった。女性の肉体美を芸術に持ち上げるのは何なのだろうか。対象に向かう写真家の目線だろうか、ぎりぎりの距離感で風景として切り取っていて美しかった。サイン本の『NUDE by KISHIN』を購入。MOMAで買ったジョック・スタージェスの写真とはスタンスが対極的な位置にあるようだが映像としての芸術は本質的には似ているのではないかと思った。

 午後、コンペ作業を進める。コンフォルトに取材記事を書かせてもらった画家の池田学さんより「プロジェクト30」の「しおり」が届く。光沢のある沢山の色が綺麗な線で丹念に描かれていた。こうして一人一人の返信をみてささやかなコミュニケーションが成立していることを実感する。僕の方の「しおり」がみんなのどんな本に挟まれているか想像するのも楽しい。

4月20日(月)
 午前中、メールなどの雑務。ポストを開けるとまた「プロジェクト30」の「しおり」が返信されていた。みんなのスピードに驚く。早くも全体の一割が届いたことになるので、早速データ化してここにアップする。僕の着色とは全く違ったドローイングが少しずつ浮かび上がってくる。楽しみだ。

 午後、兄帰宅にてみんなで遅いランチ。相変わらず可愛い甥と姪とたっぷり遊んで帰宅。新しいコンペに取り掛かる。まずはしばしアイディアを考える。その後、また銅板に向かう。

 夜、ネットでピーター・ズントーのプリッカー賞受賞を知って勝手に喜ぶ。本当に強度のある空間、本質的な建築をつくり続けているのでこうして評価させるのは素晴らしい。彼の建築に足を運び入れた瞬間を未だに覚えている。昨年秋、高松宮記念世界文化賞の建築部門を受賞した際に来日し、講演会をした時のことを思い出す。東大でのトークイベントに夜のレクチャーからは本当に多くのインスピレーションをもらった。しかし、あの日からもう半年がたったのか。光陰矢の如し。雑読して寝る。

4月19日(日)
 もうすっかり風も暖かくて気持ちがよい。日差しも冬の鋭さがゆるくなって春のそれになっている。新緑の美しい季節の始まりか。窓を全開にして部屋の掃除。

 午後、真新しい銅板に向かって線を彫り始める。ニューヨークで思い浮かんだイメージがまだ頭の中に在る内に線にしていきたい。ゆっくりと細かい線を描いていく作業の繰り返し。

 深夜、時差で寝られなくなって本棚にあった『愛するということ』(エーリッヒ・フロム、紀伊国屋書店、1991)を読み始める。『自由からの逃走』は何度か読んだがこれは、ずっと本棚で眠っていた一冊。

4月18日(土)
 移動の疲れからか、いつになく飛行機の中では眠り続けた。レモン・マフィンを食べてしばし読書。帰国してからの動きをあれこれ思考してスケッチ。

 14時間のフライト。モニターの故障で映画なし。帰宅してすぐに銀座へ。友人の結婚パーティーに行く。30人の素敵な集まり。俳優さんから雑誌編集者、ミュージシャン、助産婦、商社マン、カント研究者など実に多彩な人たちが二人を祝福。本当に温かい集まりでハッピーになる。時差ぼけも関係なく深夜まで多いに盛り上がる。二人の人柄がこれだけの皆を集めたんだね。これもまた二人にとって新しいスタート。幸せな家族をつくってほしい。DUNE社長も三ヶ月の愛娘を連れてきていて最高の笑顔だった。

 帰宅してポストを見たら「プロジェクト30」がなんともう7通も返信されていて驚いた。みんなそれぞれに綺麗に着色していてプロジェクトの成功を心より喜ぶ。手紙や写真も同封されていたりして嬉しい限り。結婚した二人にも早速今日「しおり」を頂いた。近くもう一枚のドローイングもアップしたい。

4月17日(金)
 今日も天気は快晴。午前中、ラガーディア空港に向かう車窓からマンハッタンのスカイラインを今一度眺める。この林立するタワービルこそ現代の都市風景の一つの方向性であり、東京にも又断片的にこのような風景が立ち現れていることについて考える。都市の密度と見えないエネルギーはどうなっていくのだろうか。日本とアメリカの決定的な違いは、やはり移民に対する考え方の違いだろうか。しかし、やはりワールドトレードセンターの不在は今もとても不思議な感じがする。

 空の上で今日という一日がいつの間にか終わり、土曜日という新しい一日が静かにはじまった。

4月16日(木)
 午前中、近所のベーグル屋さんでフィラデルフィア・チーズたっぷりのガーリック・ベーグルを食べる。天気は快晴でベースボール日和。ジャズを聴きながら気持ちよくドライブしてブロンクスに向かう。ヤンキース×インデイアンズの地元開幕戦を観る。今シーズンから新球場になり、スタジアムは超満員。平日のデイゲームということもあってか、子供たちが少なかった。すべての始まりという歴史的な試合を観ようと期待するファンをあざ笑うかのように2-10の大敗。四球を連続するピッチャーにエラーをする野手。ダラダラと締まりのない試合展開。少し前に盛り上がったあのWBCの時のようなレベルからは到底低い野球だった。信じられないことに八回にはもう落胆したファンが球場を後にして、超高級内野席もガラガラ状態。こういう試合もあるというのがスポーツか。歴史的大敗もきっと語り継がれるのだろう。

 夜は、行きつけの韓国焼肉店で晩餐。美味しい肉とキムチを食して元気をつけて、この一週間を振り返る。とても内容の濃いアメリカン・エンターテーメントな旅であった。何より30歳という節目をこうして生まれ故郷で過ごせたのは最高だった。日本とアメリカについて色々と考える示唆に富んだきっかけをもらった。両親に感謝して、明日、一週間ぶりに東京に帰国する。エンジン全開、しっかり頑張っていきたい。

4月15日(水)
 30歳の誕生日。朝から「プロジェクト30」の感謝メールが沢山届く。嬉しい限りだ。午前中、バスに乗って一人マンハッタンへ向かう。カメラ片手に大好きな都市ニューヨークを散策。まずは、MOMAでキッペンベルガーの個展を見たりしていたら三時間くらい経過していた。この美術館は全く言葉を失う。質と量とも世界最高クラス。いつ来ても満足するし、沢山の刺激をもらう。昨年青山のときの忘れものギャラリーで観て以来探していたスタージェスの大きな写真集『LIFE~TIME』をみつけてすぐ購入。続けて、セントラル・パークを通って北へと歩く。美術館巡りの次の目的地、グッゲンハイム美術館。ライト設計の回廊式ギャラリーをのんびりと歩いてアートな時間。いつもと違って、今日はエレベーターで最上階まで上ってから下ってみた。

 夕方は、地下鉄に乗ってソーホーをブラブラする。ヨウジ・ヤマモトに入ったらこれまた数年来探していた大きな作品集『Talking to myself』をみつけて即購入。パリで見つけて以来、買いそびれてからずっと後悔していたので、高価なものだが今日は自分への誕生日プレゼントにした。そしたら石上純也設計のヨウジ・ヤマモトの新しいショップがイーストヴィレッジの方にあると聞いて歩く。半時間ほどの散歩で無事到着。既存のレンガの建物を有機的に変形させたデザイン。ガラスを多用してレンガ造とは思えない透明感のある空間だった。軽くて自由な建築なのに衣装ラックや鏡、テーブルなどがすべて床に固定されていることに何か違和感を覚えた。近くのカフェでやっと休憩。『見えない都市』(カルヴィーノ、河出文庫、2003)を学生時代ぶりに再読。

 夜は、両親とブルーノートで合流。今夜のライブは、なんとジャック・ディジョネット・トリオだった。数年前にキース・ジャレットと一緒に来日した際にオーチャードで見て以来二度目。実にカラフルなドラム音。ジャンルを超えた音楽を確実でエクサイティングなビートで刻み、観客を沸かせていた。ブルーノート・マティーニで誕生日の乾杯。優しい音楽にすっかり酔ってしまう。帰りは車でいつもの夜景スポットに行って、ハドソン越しにマンハッタンの夜景をしばし眺める。これから先のことについて色々と考える。目の前の風景を脳裏に焼き付けて、最高の誕生日に感謝する。しっかり頑張らねば。

 30歳の誕生日ということにちなんで、本日の写真を30枚ほどアップしたい。僕の駄文より幾分か今日という一日の雰囲気、あるいはマンハッタンの空気が読み取れるのではないだろうかと思う。

4月14日(火)
 午前中、アトランタからニューヨークに移動。機内で『時間はどこで生まれるのか』(橋元淳一郎、集英社新書、2006)を読み終わる。時間に対する考えを整理し、新しい解釈をするための分かり易い入門書といった印象。細かい説明を飛ばしてテンポ良く論を進めるのだが、注釈が多いのもあってすっきりしない読後感だった。

 午後、懐かしいニュージャージーの風景を車から楽しみながら実家に帰る。ネット環境も整って、こっちはまだ前日だが日本は15日になったので「プロジェクト30」のページをアップする。早速、ヨーロッパの友人から郵送が届いたとの連絡がいくつかあり、到着日指定のできなかった海外の便も無事到着したようで一安心。

 夜は、近所のショッピングモールをブラブラする。これぞアメリカのスケールだと思わせる時間。いつものシナモンロールを食べてゆっくりする。家に帰ってから荷物を整理したり、読書して過ごす。ニュージャージーは、アトランタに比べてまだ幾分寒く、外は雨。

 今回の旅でまた感じるのが空港の廊下や家の前の芝生とアスファルト、多くの「匂い」に僕の記憶はすごく反応するということ。アメリカの乾いたレンガにペンキを塗っただけの建物に香る「匂い」には、僕の小学校時代の記憶が鮮明に蘇ってくる。芝生やアスファルトの「匂い」からは、公園で父や兄とキャッチボールをしたイメージが浮かんでくる。記憶は、視覚のみならずこうした臭覚や聴覚にも大きく影響するのだろう。

4月13日(月)
 朝から台風。午前中、ゆっくりして雨と暴風が収まるのを待ってアトランタ市内を散策。ワールド・オブ・コカコーラにてコカコーラ社の歴史と世界中のドリンクを試飲する。南米とアフリカのコカコーラ社のドリンクは、強烈な味がした。続けてジョージア水族館へ。イミテーションとしての海の中をさまざまな魚たちが元気よく泳いでいた。ヒトデが触れたりする体験型の水族館で、子供たちが喜ぶつくりになっていた。大きなイルカが優雅に泳ぐ姿を分厚いアクリル越しに見入ってしまう。水族館なんていつぶりだろうか。

 夕方、リチャード・マイヤー設計のハイ・ミュージアムに行く。数年前にレンゾ・ピアノが増築部分を完成させていた。白い箱の連続。マイヤーの建築は何だか空間構成がどうしても古く感じてならなかった。ピアノの方は、曇り空にもかかわらず優しい光がトップライトから降り注いでいた。キーファーの大作が見られたのが収穫。

 ホテルに向かう帰りの電車でも感じたのが昨日のオーガスタ同様、アトランタの街の元気のなさ。屋根にまで落書きされた建築群や鏡のようなガラスで覆われたダウンタウンの高層ビル群はわれわれに一体何を語っているのだろうか。

 夜、ホテルで「プロジェクト30」のサイトページをつくりはじめる。明後日の公開を目指し、作業を進める。その後、読書して寝る。

4月12日(日)
 午前中からマスターズの最終日ゴルフ観戦。クラブハウスから樫の木をスケッチする。何といってもミケルソンとタイガーが一緒にラウンドするので、一段とギャラリーが行列をなして動く。赤いシャツを着たタイガーはやはり凄まじかった。マイケル・ジョーダンやエリック・カントナを観たときの超一流の存在感を放っていた。しかし、普段観る野球やサッカー、バスケットと決定的に違うのはゴルフが個人競技であるということ。チームの勝利を応援することに慣れているとなにか個人戦での緊迫感は新鮮に感じた。十二番ホールでも観戦しながら人工的につくられた自然のコースのスケッチを得る。片山選手も単独四位と大健闘。打つ前にマリナーズのイチロー選手のごとく左のバット・スイングでアップする姿が印象的。最終ホールのバーディー・パットは実にお見事。

 素晴らしい天気に恵まれて、最高のゴルフを大いに楽しませてもらった。プレーオフまでもつれ込んだ優勝は、アルゼンチンのカブレラ選手が勝って幕開け。白熱した戦いは、四日間を通してコンスタントにプレーした者が制してグリーンジャケットを満面の笑みで着ることになった。30年前にファジ-・ゾラーが優勝した数時間後に僕が生まれたことを両親から何度も聞いていたので、こうして実際にオーガスタに来たことが何だか不思議で忘れられない思い出となった。

 暗くなって何もない高速道路を2時間ばかり運転してアトランタに帰ってくる。久しぶりの運転にぐったり疲れてすぐに寝る。

4月11日(土)
 午前中、パンケーキとソーセージ、エッグマフィンという典型的なアメリカン・ブレクファーストで一日がはじまる。たまには良いけど毎日こんな食生活だと確実に肥満体型になるな。

 晴天の中、今日はゴルフコースをあちこちと動き回って観戦。タイガーチャージはなかったが、やはり彼だけ役者が違うといったところか。しかし、世界最高峰のゴルフを見ていると300ヤードのドライバーも数ヤードのパターも同じ一打であると、どれだけグリーンの上でゲームをつくられるかが勝負の分かれ目になる。十八番でボギーだったが、大健闘の片山晋吾選手に期待したい。一日中ゆっくりした時間が流れる。

 ゴルフコースからホテルに戻る途中、オーガスタの街がすっかり廃れていたことに気がついた。玄関前にポーチのあるアメリカの小さな家々が並ぶが多くの開口部にベニヤが張られて廃墟と化している。華やかなゴルフの祭典とは裏腹にオーガスタの街には失業率八%の暗いアメリカを感じてならない。これこそ日本で騒がれている格差社会であるまいか。

 夜、『生物と無生物のあいだ』(福岡伸一、講談社現代新書、2007)を読み終わる。とにかくここ最近読んだ本の中で一番面白かった。科学者の文章は論理的で読み易く、テンポがよい。野口英世に関する物語やDNAの真相解明の裏にある物語が特に印象的。読み始めたら止まらない感じは実に久しぶり。「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」ということについて色々と考える。本書でよく引用されるシュレーディンガーの『生命とは何か』を帰国したら買いに行って読んでみたい。

4月10日(金)
 午前中、アトランタから車で二時間ほどハイウエーを走ってオーガスタへ。車窓からはアメリカらしい自然の木々が連続する風景が続く。昼前にはオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブに到着。四万人の観衆が十八ホールの周りを歩いてそれぞれの選手のショットを追いかける。

 僕が生まれたのは、30年前のこのマスターズ・トーナメント最終日の日曜日。そしてその時トーナメント初登場で見事に優勝したのが、ファジー・ゾラー選手。一度優勝すると永久シード権を獲得するこのトーナメントには、今日もゾラー選手はプレーしていた。美しいコースに入って最初に見たティーショットもなんとこのファジー・ゾラーだった。そうこうしていたら、九番ホールのグリーンには、あのタイガー・ウッズが登場。全く一人だけオーラが違っていた。鍛え上げられた体のプロポーションに観客をも飲み込む彼の集中力。ゲーリー・プレーヤーやグレッグ・ノーマンなど往年の名選手も続々と登場。この大舞台で日本勢も大健闘。惜しくも予選通過はならなかったが石川遼選手にはやはりこれからのゴルフ界を圧倒的実力と人気で支える素質を感じた。

 あっという間の一日だった。これでトーナメントは後半戦に向かう。人生初めてのゴルフ観戦。テレビでは分からなかったのは、ゴルフコースがこんなにも起伏があるものだということと、自然界の緑の美しさ。どの緑色同士もけんかしないで美しく調和する。またどの芝生も同じ緑色をしていない。真っ白な雲が揺れる青空に気持ちよいそよ風が吹き、木々が歌う春の一日だった。

4月9日(木)
 午前中、大崎郵便局にダンボールで詰められた「プロジェクト30」を持っていく。これにて一ヶ月間に渡って作業したプロジェクトが完結した。お正月辺りから構想し、何のためにということではなく自発的にやったものなのだが、みんなのことを思うと大変だったが、いつになく満足している。近くここのサイトにもちゃんと公開したい。

 昼、慌てて鞄一つの荷物をまとめて成田空港へ。九日間のアメリカ帰郷。両親と合流してマスターズのゴルフトーナメントを観戦予定。少し日常を離れていろいろ考えたい。オバマ大統領になってから始めての渡米。昨年あのリーマンショックの当日、僕はタイムズ・スクエアでダンボールを持った金融マンを見たのだが、今のニューヨークを感じたい。

 ネット環境についてまだ分からないが更新を途絶えることなく「everyday notes」は続けたい。18日帰国予定。

 成田を飛び立って十九時間後に無事アトランタに到着。サンフランシスコ、デンヴァーを経由して二本の映画と一冊の本を読み終わる。『七つの贈り物』(監督:ガブリエレ・ムッチーノ、2008)は償いをテーマにしていて人間の本質を描き出そうとしている。『幸せのちから』同様、スクリーンに映るウィル・スミスの存在感が光る映画だった。『フロスト×ニクソン』(監督:ロン・ハワード、2009)は、汚職により大統領を任期途中で失脚したリチャード・ニクソン元大統領をイギリスの人気司会者デビット・フロストが単独インタビューする話。国民に対する説明責任を追及されたニクソンから初めて人間らしき感情が垣間見られた。『新しい郊外』(馬場正尊、太田出版、2009)は、東京R不動産など多岐に活動する建築家の自邸を建てるまでの物語。学生時代に関わっていたキラー通りプロジェクトを馬場さんの雑誌『A』に掲載してもらった時にお会いしたのを思い出す。「圧倒的に普通であること」に徹することで大衆の求めることを翻訳できる建築家でありたいという馬場さんのスタンスが文体にも表れていて一気に読み終わる。個々人の物語が住宅に宿るからこそ説得力のあるノンフィクション・ドキュメンタリーとして楽しませてもらった。

 日付変更線を超えたので長い一日になった。ホテルで倒れるように寝る。

4月8日(水)
 午前中、メールなどの雑務と読書。『一粒の柿の種』(渡辺政隆、岩波書店、2008)を読み終わる。科学という枠を超えて好奇心をもってあらゆることに望むことの大切さを実感し、普段自分が当たり前だと思っていることの中の本質について考えさせられた。

 昼、「プロジェクト30」の最終工程を進める。丹念に封筒に収めていく。夕方、ベルリン工科大×芸大のワークショップの最終プレゼンテーションに行く。グループごとにフィールドワークの発表。まだデザインするところまではやはり時間的にもできていないが、個々の視点をしっかりと展開できたら面白いものになるだろう。そのまま谷中にある沖縄料理屋で打ち上げ。フィリップ・ヴァザールが来られなくなってしまい、残念であったがこうしてベルリン工科大×芸大のワークショップに参加できたのは収穫だった。

 深夜、目黒川沿いのいつものジョギングコースを散歩して今年の夜桜を見納める。上を向いたら左側が若干欠けた満月だった。

4月7日(火)
 午前中、窓全開で部屋の掃除と洗濯。綺麗になってからメールなどのデスクワーク。続いて「プロジェクト30」の内職作業。シールを貼って手紙をサインして折ることの繰り返し。やっと少しずつゴールが見えてきた。ずっと窓を開けていたほど気持ちよい春の一日。

 夕方、最終工程として一つ一つ封筒に入れる作業を進める。これらがみんなに届いたときのそれぞれの反応が楽しみだ。夜、兄貴宅に行って食事。甥と姪が日に日に成長していて笑顔が絶えない。一歳の姪がかわいらしくロボットダンスをしたのには驚いた。帰りの自転車で目黒川沿いを通って帰ったらやはり夜桜に見惚れてしまう。

 NHK『プロフェショナル』で伊東豊雄を観る。オスロでのコンペを中心に事務所での仕事が見られて刺激を受ける。ベルリンのナショナル・ギャラリーでの講演会でお会いした時のことを思い出す。

4月6日(月)
 午前中、「プロジェクト30」の最終段階準備。いよいよ各工程が終了し、それらをまとめていく。内職のようにひたすら反復作業。何も考えないで封筒や手紙を折りたたむ作業もまた気持ちを込めてやる。思った以上に大変でずっとやっていたのに半分くらいしか終わらなかった。

 午後、ベルリン工科大×芸大のワークショップに行っていくつかのグループのエスキス。各自おのおののテーマで東京を分析し地図をつくっていた。言葉の選びかたら分析方法をできるだけ具体的にするように伝える。やはり、ペンシルビルなどの細いファサードに興味を持つ学生が多かった。参考文献として持参した『超合法建築図鑑』(吉村靖孝編著、彰国社)が評判よく、五人の学生に欲しいと言われたので買ってくることを約束する。書籍の話になって坂口さんの『0円ハウス』(坂口恭平、リトルモア)も欲しいというフランス人学生がいて盛り上がる。

 夜も終始「プロジェクト30」の反復作業。こうした作業も結構好きなのかもしれないと思い始める。

4月5日(日)
 午前中、いろいろと準備する。部屋の掃除をして頭の中を整理する。今後の動きについてあれこれ考える。

 夕方、目黒川の桜を見ながらゆっくり歩いて本屋に行く。ぱらぱらと建築雑誌を覗いて、気になった新書を三冊ばかり買う。

 夜、DVDで『エターナル・サンシャイン』(監督:ミシェル・ゴンドリー、2004)を観る。ワークショップに参加しているドイツ人学生との映画談義で話題になってみたくなった。何とも独特なテンポと世界観で描かれたラブストーリー。やはり映像作家としてのゴンドリーらしく特殊効果が随所に見られて面白かった。

4月4日(土)
 午前中、満員電車状態の上野公園を通り抜けて東京芸大へ。ベルリン工科大と芸大のワークショップのキックオフ。東京での短いワークショップだがフィールドワークを中心にしたもので、学生たちはグループ別に上野、渋谷、築地周辺を歩いて調査。学生からは、建物と建物の隙間や墓地、外の見えない窓などについての質問を受ける。

 夕方、学生たちと北川原先生のアトリエと自宅を訪問。屋上には桜のある庭と浴室がありドイツ人学生たちは興味深く見入っていた。アクリルの階段や鉄の収納扉など住宅と思わせない素材の選択が印象的だった。夜、石山研究室の先輩二人と食事をしながら建築談義。本を連続して執筆している坂口恭平さんのエネルギーには、いつ会っても圧倒される。思えば、一緒に世田谷村でアルミ板の天井を張ったりした頃から八年が経っている。色々と考えさせられた。

 深夜、桜の満開になった目黒川沿いをジョギングする。どこにでもある東京の風景が桜で一変し、期間限定の美しさでもって人々を感動させる。

4月3日(金)
 午前中、メールなどの雑務。午後、尾山台村計画のスケッチ。夕方、「プロジェクト30」の最終準備作業。

 夜、上野にてベルリンから来た工科大のワークショップ参加メンバーの食事会に参加。久しぶりにドイツ語をたくさん話した。芸大での明日からのワークショップについて色々と話し合う。短いワークショップだが実りあるものができるように協力したい。しかし、この時期の上野は花見の客でごったがえしていた。

4月2日(木)
 午前中、天気良かったので追加依頼された『かなでるき』の商品撮影。昼、「プロジェクト30」のラミネート作業の打ち合わせのため板橋へ。行く途中、綺麗な桜並木に歩くスピードが遅くなる。

 午後、銅版に向かって線を彫る。五枚目となる小作が完成する。夕方、白井版画工房にて早速試し刷り。そのほかにも前作のプリントを進めて仕事がよくはかどった。毎月二度の工房通いだが、すごく充実した大切な時間であると実感。手を動かして何かをつくることがやはり好きなのだ。

 石山さんから絶版書房第二回配本が届く。迫力のあるドローイングに目を奪われる。これは読み物としての本であると同時に、何か新しい特別なコミュニケーションの可能性を深く感じる。大学院時代、世田谷村の地下で毎日製図台に向かっていた頃を思い出し、身が引き締まる。先生の自由なエネルギーを前にして自分の努力がまだまだ足りないことを痛感し、大いに刺激をもらう。何だか味わいながらゆっくり読みたい本である。

4月1日(水)
 午前中、メールや電話などの雑務。午後から「プロジェクト30」の着色作業をついに終わらせる。やっと大きなドローイングがその姿を現した。なかなかの迫力となったし、きっと喜んでもらえるだろう。いよいよ最終段階。手を抜かずに頑張っていこう。

 夜、DVDで『ダークナイト』(監督:クリストファー・ノーラン、2008)を観る。圧巻なのは、なんといってもジョーカー役のヒース・レジャー。目的の見えないゲームとしての悪の象徴として何度も行われるコイントスが印象的。しかし、白熱の演技だった。

 

 

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