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『EVERYDAY NOTES』

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『OPENNING NOTE』

 
 

EVERYDAY NOTES - archive - 2010 may

5月31日(月)
 朝、気持ちの良い快晴が待ち受けていて、寝不足なのに清々しい帰国。事務所で早速メールなどの雑務。午後、桑沢の最終講のブラッシュアップ作業をしてたら、また色々と肉付けして大量のスライドになった。

 夕方、桑沢にて前期の前半、最後の第七講。取り上げるのはベルリン。ベルリンの壁とドイツ人の歴史とのつき合い方から話がスタート。アイゼンマンのホロコースト記念碑(途中までリチャード・セラとの共作)とリベスキンドのユダヤ博物館についてたっぷり話し、オープニングアクトとして行われたサシャ・ヴァルツの「ケルパー」を紹介。コンテンポラリーダンスとピナ・バウシュのタンツテアターについても少し触れる。続けてフォスターのライヒスタークによるガラスのドームの持つ現代的意味について話し、クリストとジャンヌ=クロードの梱包されたライヒスタークによって拡大されたコンセプトアートを紹介。それからハンス・シャロウンのフィルハーモニーホールと州立図書館を通してソフトとハードにおいて共に世界最高峰であるこれらの施設をみてもらう。シャロウンときたら、メンデルゾーンのアインシュタイン塔を通してドイツ表現主義についても話し、現代において同じく流線的なデザインのザハによるファエノ科学センターとUNスタジオのベンツ・ミュージアムを紹介。続けてバウハウスについて説明し、それからベルリンに戻って、共和党宮殿の取り壊しとオランダ大使館について話す。ベルリン在住のアーティスト、オラファー・エリアソンのスタジオを紹介。最後は、僕がベルリンで開いた個展『CONNECTED BORDERS』のドローイング11枚を見てもらい、建築設計を自由な感覚で挑戦する気持ちを大切に頑張ってほしいことを伝える。短距離でなくマラソンのような持久力をしっかりとつけてもらいたい。ギリシャから始まった七回の連続講義で多くの都市を通して建築/美術を旅してもらったので学生のみんなには何かしらひっかかったものがあればそこから自分たちの旅をスタートしてもらいたい。今の内に世界の他者に対する優れた感覚と柔軟性を身につけてほしいし、密度の濃厚な旅を通して、記憶を定着させる作業を忘れずに自分たちの「物差し」をしっかりと磨いてみつけてほしい。大事なのは継続する力でありそれは物事をどれだけ本質的に思考できるかにかかっている。その一つの水準らしきを感じてもらえたらこれらの連続レクチャーは僕にとっても大きな収穫であった。

 夜、渋谷で30人の学生たちと打ち上げ。ビールで乾杯し、来週から担当してもらう佐々木先生にも授業に続き飲み会にも参加してもらい、引き継ぎもばっちり。初めてのレクチャーであったけど一生懸命やったので、その熱意はしっかりと伝わっていたのが分かり素直に喜ぶ。30対1ってのはなかなか突っ込んだ話ができなかったが、それぞれの生の声が聞けて、ウィスキーも手伝ってふらふらになる。さすがに全員の顔と名前は一致しないが、みんなとのコミュニケーションはこれからも取っていけるので健康的な野心をもってしっかりと努力して頑張ってもらいたい。朝の五時半まで十人の学生が残り、いろいろと飲み明かす。飛行機でも寝てないことを思うと丸二日起きていたが、ぼろぼろな体調とは裏腹に心地よい達成感に包まれる。明るくなっていたのでゆっくりと自転車に乗って目黒に帰ってベットに倒れ込む。長い一日、いや二日が終わる。

5月30日(日)
 朝、快晴の下、フェヤン島の大自然を散策。慌てて荷造りをして、最後に部屋から見えるコテッジと島々の風景をスケッチする。みんなで朝食を食して、友人たちと別れる。フェリーでストックホルムまで戻り、空港に向かう。五泊六日の旅が終わり、親友の特別な結婚式をスウェーデンの誇るアーキペラゴの自然の中で体験できたのは実に素晴らしかった。心身ともにリラックスできたので、また東京に戻って頑張っていきたい。

 コペンハーゲン経由で日本へ帰国。飛行機では、ひたすら桑沢の最終講義、ベルリンを仕上げていく。今、シベリアの上空を飛んでいるらしい。自分の一番好きな都市ベルリンの講義もまとまり、読書と映画の時間。時差のため全く眠くない。

 『東京ファイティングキッズ・リターン』(内田樹・平川克美、文藝春秋、2010)を読み終わる。実に面白かった。二人の間で交わされる言葉のキャッチボールが実に多様に絡み合い、それぞれがブリコルールとなって思考のレンガを積み上げていくのが手に取るように分かり、多くの刺激をもらった。鉛筆を持ち合わせていなかったので線を引く事ができなかったので、気になるところの頁の角を折っていたら、最終的にすごい量の頁が折られることになった。帰国したら再読して整理したい。続けて途中になっていた『ベルリン物語』(川口マーン恵美、平凡社新書、2010)を読み進める。

 気がついたら日付が替わっていて月曜日となっていた。

5月29日(土)
 朝、みんなで島のカフェテリアで朝食。ハム&チーズにゆで卵。アーキペラゴの風景を楽しみながら島の中を散策。途中、沢山の蟻やカタツムリと遭遇。自然の森の中を迷子にならないように歩き回る。

 昼、ドレスアップして結婚式のスタート。この結婚式は、新郎新婦の遊び心で参列者みんなが「帽子」をかぶらなければならないというルールがあり、僕もストックホルムの旧市街で見つけた帽子をスーツに合わせて来て行った。誓いの言葉と歌をみんなで囲って自然の中でのカジュアルな結婚式。友人たちは最高の笑顔でこの瞬間を祝福していた。ベジタリアンの二人が選んだディナーも素晴らしく美味しかった。沢山の懐かしい再会を最高の食事とお酒と一緒に楽しんで、夜は机が片されてダンスフロアとなった。

 深夜、海の青さと空の青さがほとんど同じに見える瞬間があり、そこに霧がかかってえらく幻想的な風景をみんなで共有することができた。最後に花火があがり、新郎新婦が小さな二つの気球風船を飛ばした。深夜になっても真っ暗にならない北欧の空にゆっくりと消えていく気球風船をみんなで眺めていた。少し時間が止まっているかのような不思議な体験。

5月28日(金)
 午前中、ストックホルムの旧市街を散策。雨が降ったりと急に晴れたりの天気が続く。昼、アスプルンド設計の図書館を見学。角地に立つこの図書館を九年ぶりに体験してみると、スケール感がどこかローマのパンテオンと似ている事に気づく。そう思うと、床のデザインまでも類似しているように見えてくる。

 午後、続々とベルリンから懐かしい友人がストックホルム入り。二年しか経ってないが、多くの同僚が親になっていて、可愛い子供たちを引き連れていた。集合場所の駅からバスでフェリー乗り場まで行く。ストックホルムを出て北東へと進んだが、20分もしない内にのどかな森の風景が続く。フェーリーで半時間ほどしてフェヤン島に到着。結婚式参加者の半分強の50人で前夜祭のBBQ。お互いの近況を話し、ベルリン話で夜な夜な盛り上がる。出版されたばかりの2G特集号を所長のサイン入りでもらう。

5月27日(木)
 午前中、お気に入りのカフェで桑沢の第七講をつくる。最終講義は、ベルリンを取り上げる。ストックホルムは、相変わらずの快晴。

 午後、アスプルンドの名作、森の葬祭場に出向く。新緑の森の中をゆっくり散策。九年ぶりに来たが、全く同じルートを歩いているのではないかと思うくらい明確に当時の体験を思い出した。もちろん、同じ場所からスケッチをする。今回は、水彩で描く。とにかく刈りたての芝生の香りがそのランドスケープの流動的的な存在感を増幅している。空気が美味しい。夕方、光が鋭くなり影が一段と長くなった頃に森を出る。

 夜、友人たちと合流し、スウェーデン料理を頂く。深夜、読書も程々にベットに倒れ込むように寝る。

5月26日(水)
 午前七時、すっきり目が覚めて近所を散策。北欧独特の鋭い光がつくる長い影に誘われて無目的にストックホルムの街を歩く。多くの人が自転車に乗っている事で車の交通量がえらく少ないように感じる。街行く人たちはみな身だしなみが綺麗で、決して高価ではないが自身のスタイルらしきを持っているようだ。また、見受ける限り人種がホモジェニックな印象を受ける。

 昼、イラストレーターとして働くイタリア人の友人と久しぶりの再会。思えばローマのスペイン階段で出逢って10年が経っている。その間、ローマ、ベルリンと何度か会い、こうしてストックホルムを案内してもらっている。不思議なもので会った回数はわずか片手ほどだが、いつどこで会っても共通した感覚で時を忘れて話し込む。ユーガーデンと旧市街地を中心に散策。快晴。またの再会を約して別れる。

 夕方、結婚する友人夫妻と合流し、ジーグルンド・レベレンツの聖マルクス教会を観に行く。九年前に行きそびれた名建築。ストイックなレンガの使い方となんと行ってもその明快な開口部のデザインに圧倒される。分厚いレンガの壁を切り取ってガラスを当てただけのディテールは、鋭い北欧の光を更に強調して暗い室内に強烈な光を引き込んでいた。波打つ天井の作り出す空間の流動性も強く印象に残る。写真を撮る事に必死でスケッチブックの出番はなかった。

 夜、友人夫妻の実家にお邪魔してご両親たちと食事。彼らと同様ご両親も頻繁に旅に出るので、日本に来たとき以来の再会になったが、もう二年近く前である事に時間の早さを実感する。陽が長いため深夜までワインを飲みながら建築談議で盛り上がる。

5月25日(火)
 朝、どたばた荷造りして成田空港へ。ミュンヘン経由で15時間かけてストックホルムに到着。午後十一時だというのに西の空がほんのりまだ明るい。

 『マイレージ、マイライフ』(監督:ジェイソン・ライトマン、2009)を観る。企業に代わってリストラを宣告する仕事をしながら人生とは何かという幸福論について描いている。エリートサラリーマンの役をやらせたらジョージクルーニーの右に出る者はいないだろう。

 まずは、『マルセイユのユニテ・ダビタシオン』(ル・コルビュジェ、筑摩書房、2010)を読み終わる。コルビュジェの入念な思考、変化する社会に合わせて、都市に対する新しい大衆のためのライフスタイルの提示が丁寧に描いてあり勉強になった。続けて『東京ファイティングキッズ・リターン』(内田樹・平川克美、文藝春秋、2010)を読み始める。二人の間で交わされる知的なやり取りを読みながら、著者との顔の見えない対話であるはずの読書が、内田先生本人の顔が思い浮かぶためにまた違った距離感での対話が読書を通して発生するのを実感する。

 空港から中央駅までバスに乗り、友人夫妻と久しぶりの再会。今回の宿となるフラットまで案内してもらい、近況報告で大いに盛り上がる。週末の式までの予定をざっくり立てて別れ、ぐっすり寝る。

5月24日(月)
 午前中、U邸の断面スタディーをスケッチ。昼、メールなどの雑務を済ませて、桑沢の講義の仕上げ。スライドの流れと細かいチェック。午後、恵比寿で打ち合わせ一本。青山のスパイラルにて『ティンバライズ建築展』を観る。木造の新しい可能性を深く追求する面白い展示だったが、デザインにおいて圧倒的な新しさ/強さ/ヴィジョンを見せつけるような群を抜く作品は残念ながらなかった。都市木造の新しさは、きっと鉄骨やコンクリートとは違ったシステムで表現されるのだろう。しかし、青山周辺で多くの架空プロジェクトを展示するなど見応えがあった。

 夕方、桑沢デザイン研究所にて第六講。アアルトのフィンランドからスタートして、パイミオのサナトリウム/マイレア邸/コエタロを中心に自然環境とデザインの関係性を話し、キアズマやレイヴィスカの教会などヘルシンキの現代建築も紹介。アアルトの家具と花瓶から技術についても話す。後半はアメリカに渡り、イームズ邸から始まってカーンの三建築をピックアップ。ブリティッシュ・アート・センター/ソーク生物学研究所/キンベル美術館を通してカーンの執念とも言える光の空間についてレクチャー。最後にイサム・ノグチのパブリックアートを中心に紹介し、マイレア邸と同時期に設計されたアメリカの巨匠フランク・ロイド・ライトのカウフマン邸(落水荘)のスライドで終了。ついつい熱くなってしまい、九時半まで延長して話してしまう。始めは長く感じた三時間も、今では足りないくらいになってきた。授業前も授業後も熱心な学生らにあれこれと質問を受ける。皆、講義に触発されて夏は旅に出たいとのこと。また、紹介する参考文献が難しくて大変だと何人にも言われたが、良著を紹介しているので背伸びしてじっくりとチャレンジしてもらいたい。今日の感想シート、ほとんどがキンベルのコンクリートの光が印象的だったと書いてあった。

 帰り道、銅版画を飾ってもらっている『リスペクト・カフェ』で大好きなシブヤライスを食して帰宅。深夜、もろもろの指示をメールで送り、スウェーデン旅行の準備をする。スケッチブックと筆箱/カメラさえ忘れなきゃ問題なし。ストックホルムで久しぶりの北欧の空気を満喫したい。旅の目的はベルリン時代の親友の結婚式。何故か不思議なもので、20代後半の四年間をすごしたベルリン時代に多くの日本の友達は結婚し、日本に帰国したらベルリンの友達が結婚し始めた。でも再会する最高の口実となるので、楽しんできたい。アスプルンドとレヴェレンツの建築も再訪したい。

5月23日(日)
 午前中、メールなどの雑務。一日中雨模様。午後、両国にて友人たちと合流し、初めての相撲観戦。横綱白鵬の全勝優勝と大関魁皇の通算1000勝を観る。圧巻の迫力もさることながら、力士の皆の体の柔らかさ、しなやかさに魅入る。あと体がぶつかり合う音が印象的。

 夕方、事務所に戻って桑沢のレクチャー準備。フィンランドからアメリカに渡って、カーンとライトの建築を取り上げる。参考文献を幾つか雑読。深夜、『1Q84』BOOK3を読みながら寝る。

5月22日(土)
 午前中、メールなどの雑務。昼、五反田から池上線に乗って千鳥町。時の忘れものギャラリーの企画した山口文象邸見学/コンサートに足を運ぶ。山口勝敏さんのピアノコンサートを聴き、植田実先生のミニレクチャーをプールのある中庭で受ける。70年前に建てられた山口邸は幾度となく改修/増築を繰り返し、時間の蓄積を感じる魅力的な空間だった。明快な平面のプラニングで広い中庭があるため、あらゆる変化もうまく対応しているからこそとても豊かな歳の取り方をしているのだろう。新緑の季節で快晴の空ときているので最高に贅沢な午後を過ごす。

 夕方、事務所に戻って桑沢のレクチャーを準備。アアルトの建築を観た2002年の夏の一人旅から帰国して書いた卒業論文を引っ張りだして流し読み。

 夜、『あるスキャンダルの覚え書き』(監督:リチャード・エア、2006)のDVDを観る。ケイト・ブランシェットのイノセントとダークな両極端な演技が印象的。アメリカで起きた事件がモデルになっているらしい。

5月21日(金)
 午前中、メールなどの雑務。動き出してる幾つかの新しい案件のフォロー。昼、桑沢のレクチャー準備。ベルリンは来週にスライドして、辺境としてのポルトガル/シザに続けて、北欧フィンランド/アアルトから講義を始めることにする。

 夕方、U邸の平面と断面をチェック。あれこれと細かいところのアイデアを整理する。ICベルリンの眼鏡のデザイン・スケッチを進める。これは初めてのことなのでとにかく楽しみながらデザインしてみたい。

 一日中、夏日で暑かったので夜のビールが美味かった。深夜、『1Q84』BOOK3を読んで寝る。

5月20日(木)
 午前中、銅板に向かって線を彫り進めて小作を完成させる。設計している形を自由にしたいがために銅版画をやっているのだが、創作の時間の大切さを実感すると共に、基本的に深夜、世間が寝静まった時に彫るのが好きで、こうして太陽のある内に彫るのは実に新鮮。

 昼、シンガポールのイベントデザインのスケッチをもう一枚描く。昨日のと合わせて二案をプレゼンボードに仕上げて送信。続けて、ICベルリンの眼鏡の検討。まだ具体的な突破口、イメージが浮かばない。

 夕方、ギャラリー間にて『竹原義二展/素の建築』を観る。丁度僕の学生時代が手書図面からCADにシフトし始めた頃なので、壁に展示してあったゴリゴリの手書図面をどこか懐かしい思いで魅入る。四階に並べられた1/100模型も、質と量ともに圧巻。しかし、住宅というのは形態以外を単体として理解するのは難しく、あれだけの模型を観てると、ついつい各住宅の敷地外の条件(隣地との関係性)を知りたくなってしまう。また、せっかく沢山の図面を展示しているのにカタログが写真中心だったのが少し残念。

 乃木坂から赤坂の白井版画工房にて、色の組み合わせを考慮して刷り作業。スカイブルーの刷りを四時間もみっちりしてると指先はまるでアバター。今朝完成したばかりの小作も試し刷りしてうまくいった。

 帰り道、大学時代の友人と合流して『カフェ・ライフ』で一杯。新しく展示させてもらっている手彩色した銅版画も確認し、お互いの近況報告。深夜、メールなどの雑務。シンガポールから早速二案とも気に入ったとの連絡があり一安心。案件化に向けて更に進めてみたい。一日中、雨な木曜日だった。

5月19日(水)
 午前中、メールなどの雑務。昼、シンガポールのイベントデザインのスケッチを本格的に描く。一案完成。プレゼンボードの準備も進める。もう一案思いついたので明日描いてみよう。夕方、U邸の平面をチェック。続けて断面を確認する。屋根形状のアイデアを考えねば。

 夜、銅板に向かっていつものように幻想都市風景を彫り進める。無意識にしてると、エンドレスに手が動く。描いているときは本当に何も考えていない。問題はつい集中してると削れた銅のカスが口の中に入るため、味わってしまう。深夜、『ベルリン物語』(川口マーン恵美、平凡社新書、2010)を読み始める。涼しい雨の降る中、窓を開けてゆっくりと読書を楽しむ。

5月18日(火)
 午前中、メールなどの雑務。昼、桑沢の第六講を早速準備する。いよいよベルリン。四年間住んでいたので沢山の物語がある。写真をピックアップしていたらあっという間に100枚近くのスライドになる。午後はシンガポールのイベントデザインのスケッチを進める。

 夕方、原宿まで出かけて石山研究室の先輩、馬場正尊さんが宮城県の蔵王に設計した『オルタナハウス』の講演を聞きに行く。裏原にあるワイス・ワイス・ビルの中にあるチェコ料理に特化したカフェで雑誌『オルタナ』によって主催された会で多種多様な方々がいて、グリーンな町おこし、工務店さんの森を守るための活動など皆さんのリアルなお話を伺い大いに刺激をもらう。環境問題に対する意識の低さを上げていくためにもオルタナティブを見つけて推し進めるエネルギーの大切さを実感する。学生時代に馬場さんのつくっていた雑誌『A』にプロジェクトを掲載してもらった時以来、10年ぶりの再会であったが、僕のことを覚えてくださり、色々と話し込む。

 夜、U邸の平面を確認。各部屋の広さや関係を整理しながら他の可能性を検討していく。深夜、銅板に向かって線を彫る。固い銅に対して鋭い針が当たって彫っていく感覚は紙にペンとは異質であり、立ち上がる線もまた違ってくるのでいつも新鮮な楽しみがある。BGMは、訃報を知ったハンク・ジョーンズのピアノを聴きながら。

5月17日(月)
 午前中、メールなどの雑務を済ませて『カフェ・ライフ』へ行く。展示させてもらっている銅版画作品の入れ替えを行う。同じ版の違った色を展示していたのに対して、手彩色した別の版を二階の棚に飾らせてもらう。

 午後、U邸のスケッチを進めて、今後の展開を整理する。続けて桑沢のレクチャーの仕上げ。それぞれのデータチェックをして渋谷に行く。第五講、ポルトガルの建築を辺境としてのモダニズム、地域主義という側面を通してシザの建築を紹介する。空間のシークエンスについて。ポルトの街、OMAのカサ・ド・ムジカについて話して、後半はロンドンに移る。イギリスの機械好みからフォスターのハイテク建築、セインズベリー視覚芸術センターとフラーの関係/テート・モダンのオラファー・エリアソンの『太陽』とアントニー・ゴームリーの彫刻についても触れる。160枚のスライドをたっぷり三時間かけて話す。

 夜、学生さんが誕生日ということで飲み会に参加。講義の続きを語る。講義のリアクションを生の声として聞く。旅について話しているので、みんなの夏の旅計画を中心に深夜まで盛り上がる。終電を逃した組とまた別の店で飲み直す。五回の講義で計15時間、旅を通して建築の話をしてきたわけだが、こうして学生たちと話してるとそれぞれにしっかりと講義を理解して解釈してくれているので安心する。あと二回もしっかりと全力投球したい。

5月16日(日)
 午前中、ゆっくりして近所の神社などを散策する。昼、山車を間近で見て、臨場感ある祭りの熱気を感じる。午後、電車を乗り継いで新幹線に乗り、東京へ戻ってくる。先日の京都美山町と続き、自然豊かな日本の田舎の美しき風景を思う存分味わう素晴らしい週末だった。

 夜、スーツに着替えて友人の結婚式/二次会に参加。渋谷のスクランブル交差点のスクリーンでリアルタイムでプロポーズするというサプライズ企画もある暖かい素敵な宴であった。さて、5月もあっという間に折り返し、エンジン全開で頑張っていきたい。

5月15日(土)
 早朝、晴天の中、人のいない名古屋を散策。四間道のエリアを中心に歩き回る。喫茶店でモーニングを食べながら『建築を愛する人の十二章』(香山壽夫、左右社、2010)を読み終わる。氏の放送大学の講義をまとめたもので、12のテーマに沿った建築の話。ルイス・カーンの話がよく登場するが、具体的にブリティッシュ・アート・センターとキンベル美術館の光についての文章が読みたかった。

 午前中、名古屋駅にて大学の同級生の構造家とU邸の打ち合わせ。構造的なアイデアの展開をたっぷり二時間相談する。

 昼、大垣にて山本浩二画伯夫妻を中心にメンバーがそろって美濃高田へ向かう。電車を下りたとたんに空気の美味しさに驚嘆する。早速、養老高田祭りを見学。大学の先輩、安田綾香さんを紹介して頂き、自身で設計(L&Cdesign)した築160年のご実家を案内してもらう。時間の蓄積が素材を通して空間の強度として伝わり、古民家とモダンなデザインとの絶妙なバランスが素晴らしかった。祭りの会所としても使われていて、とてもいきいきし、借景としてのお庭がこれまた美しかった。山本先生を中心にトルティージャ(スペインオムレツ)とおでん、七輪での飛騨牛の焼き肉を囲んで食事。夜な夜な盛り上がり、建築の話から初対面とは思えない実にハッピーな時間を過ごす。締めは、サウナと露天風呂。

5月14日(金)
 午前中、メールなどの雑務。昼、高田馬場でエネルギー関連の組織づくりについての打ち合わせ。続けて、早稲田大学長谷見教授に相談。教育の意義から理論/実践のあり方の可能性を中心にお話を伺う。

 夕方、目黒に戻ってシンガポールでイベント会社をしているお施主さんと打ち合わせ。シンガポールにて「ジャパン」をテーマにしたイベントデザインについて。初めての試みで海外とのやり取りやタイトな時間のことなど難しい側面もあるが色々と楽しみな展開もありそうな仕事なので承諾する。来週中にデザイン・イメージのスケッチを準備したい。夜、新宿から夜行バスで名古屋へ。

5月13日(木)
 午前中、桑沢の第五講の準備を進める。ポルトガルから北上して海を渡ってイギリスへ。フォスターのハイテク建築を取り上げる。昼、U邸のスケッチ。二階平面をチェック。新しい案件、明日の打ち合わせのために資料をチェックして、ラフアイデアをスケッチする。

 夕方、赤坂で打ち合わせ一本。白井版画工房にて先週刷ったばかりのコバルトブルーの版画作品を取りに行く。早速、買って頂いたお施主さんの指定した額に入れてもらうように手配する。

 夜、事務所に戻ってU邸の断面のアイデアをスケッチする。一階の部分のアイデアのバリエーションを考える。深夜は、机の上の書類を整理してゆっくり読書。『斜めにのびる建築』(クロード・パラン、青土社、2008)を読み始める。

5月12日(水)
 午前中、U邸の平面図をスケッチ。一階、二階平面を寸法関係も含めてあれこれとバリエーションを展開する。

 昼、ランチの後にふらふらとアントニオ・レーモンド設計の聖アンセルモ目黒教会まで散歩。折り紙のようなコンクリートの構造が立派な内観の強度をつくりだしていた。午後、桑沢の第五講のスライドを準備し始める。今度はポルトガル。まずは、シザの建築をピックアップ。

 夜、お施主さんから無事額装された二枚のドローイングが届いたと連絡あり。「青の都市/赤の都市」の二連作を気に入ってくれたみたいで安心する。僕の描いたドローイングがまた新しい場所をみつけ、飾られた部屋の空気を呼吸してお施主さんと共に作品が成長していくことを心より願いたい。

 深夜、銅版画を整理して、『1Q84』BOOK3を読み進める。あと少し。

5月11日(火)
 午前中、メールなどの雑務を済ませて雨の中、庭園美術館へ。写真家の友人と合流し『ロトチェンコ+ステパーノワ/ロシア構成主義のまなざし』展を観る。マレーヴィッチやタトリン、リシツキーは幾らか観たことがあったがロトチェンコ/ステパーノワは初めて。二人の作品をこれだけ沢山一同に比較しながら観られて実に示唆に富んでいて面白かった。絵画からディテールがなくなり、線が独立して抽出されると同時に色彩の感覚の自由さに深く見入ってしまう。絵画のみならず、デザイン/建築/広告(ポスター)/衣装/写真と多分野におけるその作品の質と量を支えるエネルギーらしきに驚く。

 午後、シンガポールでの空間デザインの仕事のエスキース。続けてICベルリンの眼鏡のデザインのためにドローイングを幾つか展開する。夕方、新宿にてテナントビルの空き部屋の内覧。友人と共同で美容院の内装をするかもしれない。打ち合わせをして、夜は新橋で別の会合に参加。多くの先輩方に囲まれ、いつになく多くの刺激を受ける。

 深夜、帰宅して銅板に向かって線を彫り進める。頭を空っぽにして、カサンドラ・ウィルソンを聴きながら。

5月10日(月)
 午前中、U邸の打ち合わせの議事録を作成して送信。午後、桑沢のレクチャーを仕上げていく。夕方、前回の講義で反応が多かった「フォルコラ」の実物を持って渋谷の桑沢デザイン研究所へ。

 第四講はスペイン。バルセロナはもちろんガウディからスタートし、モンセラットの山脈など自然界との関係から装飾というよりも構造的にモチーフとして取り入れられた建築としてサグラダ・ファミリアからコロニアル・グエルまでを説明し、LAに飛んでサイモン・ロディアのワッツ・タワーズを紹介。オリジナルと模倣、34年に及ぶ一人の創作について考える。続けてタピエスの絵画やチリーダの彫刻を紹介してビルバオグッゲンハイム美術館にて20世紀の建築の一つの到達点を話す。そこからカルトラヴァの構造的なデザインの建築群/マドリードのレイナ・ソフィア芸術センターにあるピカソの『ゲルニカ』/コルドヴァのメスキータ/グラナダのアルハンブラ宮殿へとスペイン横断の旅レクチャーを三時間みっちり話す。講義の最後に「自分の部屋を描け」という即日課題を出したが、実に多彩で面白い空間認識がそれぞれのスケッチから読み取れて面白い。また、参考文献として紹介した『写真論』や『建築の多様性と対立性』、『日本辺境論』を読んで読書感想文を自分の言葉でしっかり書いていた。今週は、気分を変えて本ではなく映画リストを紹介したからもう少し提出率が上がるだろうか。

 深夜、メールなどの雑務をして新しい案件の企画書に目を通す。幾つかの本を雑読して寝る。

5月9日(日)
 午前中、ゆっくり寝た。メールなどの雑務をして、鮫洲運転免許試験場へ。自動車免許の更新、ベルリンでの四年間で一度失効しているので今回が初回更新とのこと。二時間の講習を受ける無事更新。

 夕方、恵比寿ナディフアパートにて本を物色。二冊ほど購入し、カフェでゆっくり読書。『アントニ・ガウディとはだれか』(磯崎新。王国社、2004)を再読する。コルビュジェが評価した二つの建物、ボデーガ・デ・ガラーフとサグラダ・ファミリア付属学校が印象に残る。

 夜、桑沢のスライド準備を進める。GWで間が二週間あったが、気がつけば明日またレクチャー。ガウディとロディアを比較してみよう。深夜、銅板に向かって線を掘り進める。

5月8日(土)
 午前中、早速届いた四箱の書籍を本棚に整理し、メールなどの雑務。写真美術館にて森村泰昌『なにものかへのレクイエム』展を観る。写真には既視感からかあまり感動しなかったが、映像作品に不思議な強度を感じた。あれは何なんだろうか。

 午後、白井版画工房にて依頼された作品の刷り作業を進める。コバルトブルーをベースにした深い青の作品が完成。刷り作業を四時間みっちり続けて、五枚のエディションを刷り切った。ハーバード大学に秋から留学する買ってくれた友人もきっと喜んでくれるだろう。

 夜、桑沢のスライド準備を進める。深夜、銅版画の整理をする。月に一枚のペースを守れるようにしっかり頑張っていきたい。

5月7日(金)
 午前中、書籍の詰まった段ボール四箱を事務所まで輸送を手配。昼、京都まで行って新幹線に乗って東京に戻る。車内で集中的に桑沢のレクチャースライドを準備してたらあっという間に品川。

 夕方、新しい仕事の案件などの整理と準備作業。メールなどの雑務。新しい銅板に向かって線を彫る。何だか先日の京都美山町の風景が脳裏によぎる。夜、名古屋にいる構造家の友人とスカイプMT。U邸についてあれこれと話し合う。深夜、『1Q84』BOOK3を読み進める。読むのが遅いのでやっと折り返し。

5月6日(木)
 午前中、桑沢の第4講を準備する。スペインを取り上げるので、バルセロナからはじめていく。午後、息抜きにまた実家の和室に眠ってる学生時代の本を整理して東京に送るための箱詰め作業。桑沢の講義もほどほどに、夕方、奈良まで阿修羅像を観に出かける。

 帰郷した初日は大混雑で諦めたが、今日はすんなりと興福寺国宝館に入ってゆったりと観ることができた。その素材とスケールを間近でガラス越しではなく体感できたのは収穫。表情の豊かさにその繊細なフォルム、最小限の装飾性に時間を忘れる。千手観音菩薩とのスケールの対比に驚く。その後、興福寺周辺をお散歩。さるさわ池のたくさんの亀たちもこの暑さに滅入って、甲羅干しをしていた。

 夜、『三時十分、決断のとき』(監督:ジェームズ・マンゴールド、2007)のDVDを観る。忘れかけていた西部劇というジャンルだが、実にスリリングな展開。強盗犯を刑務所まで輸送する汽車に乗せるまでのお話。単純なプロットの中に複雑に絡み合う人間の欲望。父のプライドにみる希望の光。人は何のために生きているのか、何を幸福と感じるのか。

 深夜、再度桑沢の講義スライドを編集を進める。明日、東京に戻る。

5月5日(水)
 ぐっすり寝かせてもらって気持ちよい目覚め。朝もカエルは鳴いている。午前中、茅葺きの小林さん宅をスケッチする。家の前の田んぼの面積が家族一年分のお米として充分な収穫であることを教えてもらう。自給自足のモデル、相互扶助社会についてあれこれ考える。屋根裏のスペースを見せてもらったりもした。続けて、小林さんの育てた杉で近くに建てたモデルハウスを見学させてもらう。木の匂いや肌合い、スケール感などとても参考になった。

 昼、美味しいつけ麺パスタを頂き、映画や政治の話で盛り上がる。午後、内田樹先生の運転で美山町を後にする。何か特別な時間の終わりを感じてしまう。広葉樹と針葉樹がブレンドされた美しい新緑の森を見ながら二時間ちょっとで御影まで戻ってくる。帰宅した奥さんと早速三人で模型を囲んで打ち合わせ。

 夜、奈良に帰ってくる。『1Q84』を読み進める。しかし、この二日間は、自然の魅力を思う存分に感じることができ(シティーボーイのカントリー体験といったところか)、体の隅々まで元気をもらったので、これからもしっかりと頑張っていきたい。

5月4日(火)
 午前中、打ち合わせの準備をして両親と西宮まで車で出かける。お墓参りをしてから御影の内田樹先生宅へ送ってもらう。早速、内田先生と京都の美山町までドライブ。車内では、龍/春樹のダブル村上話から音楽/出版業界についてなど色んなエクサイティングな話を伺いながらスイスイ走る。

 二時間ほどして美しい茅葺き屋根の風景が続く美山町に到着。日本ののどかな風景。宮本常一の本が無性に読みたくなった。内田先生が二十年来お付き合いしている「哲学する木こり」の小林直人さん宅にてGW恒例の山菜天ぷらの会に招待していただく。自己紹介も程々に、早速模型を見ながらU邸のプレゼンテーション。小林さんの森で育った木材で建設を進めることを確認しながら、屋根や天井のデザインについて話し合う。

 夜は、摘みたての山菜を天ぷらにして食したが、これほど美味しい山菜天ぷらは食べたことがなく、美酒も手伝って沢山飲んで、沢山食べさせてもらった。温もりのある小林家の方々と内田先生とで交わされる多様な話が面白く、僕も初対面とは思えない濃厚で幸せな時間を過ごさせてもらった。深夜、目の前の田んぼから聞こえるカエルの合唱をBGMに就寝。

5月3日(月)
 久方ぶりの実家で爆睡。朝食を済ませて、梅田へ。打ち合わせを一本。午後、司馬遼太郎記念館へ足を運ぶ。氏の6万冊に上る蔵書の内の2万冊を納めるアールのかかった建築は、地下に埋められ素敵な雑木林が最大限に尊重されていた。春の新緑も美しく、ゆっくりとした時間を過ごす。

 奈良に帰ってくると、平城京を中心としたイベントは相変わらず観光客で賑わっていた。『コラージュ・シティ』(コーリン・ロウ、鹿島出版会、2009)を読み始める。深夜、桑沢のレクチャーのスケッチを考える。

5月2日(日)
 模型の入った箱を持って、朝の新幹線に乗る。GWということで品川駅は大混雑。『1Q84』BOOK3を読み始める。京都で下車し、帰郷中の弟と合流。奈良までドライブ。興福寺に行こうとするもあまりの人集りにパス。

 実家でのんびりする。阪神が巨人を3タテして首位になる。夜、桑沢のレクチャーを作り始める。深夜、『1Q84』を読み進める。

5月1日(土)
 午前中、模型の最終調整。1/100と1/50が無事完成。午後、プレゼン資料の準備。断面と平面を整理してプリントアウト。天気の良い一日だったが、事務所から出ないで作業を進める。深夜、模型写真を撮り、プレゼン資料が完成。午前四時、仮眠。

 

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